VS『HEY!鏡』その①
「うーむ、打ちたい台がないなぁ……」
自転車にまたがり、自宅近くのC店へと向かいながら私はこんなことを思っていた。打ちたい台が無いというのならば、打たなければいいだけの話だ。なぜ打ちに行くのか。しかし、そんな冷静さはとうの昔にどこか遠くへと郵送した。そんな野暮なことは言うべきではない。仕事が休みでやることがないのだから、打ちに行くしかないだろう。
『打ちたい台が無い』
C店に着いても、私の気持ちに変わりはなかった。そんな気持ちを抱えながら入店する。心中でひっそりと思っていたつもりなのだが、あまりにも強く感じていた感情だったので、もしかするとその言葉が口に出ていたかもしれない。
……不安だ。「打ちたい台がないなぁ~」なんて口走りながら店に入ってくる男になっていなかっただろうか……。そんなことをしてしまってはもしかすると、女性の店員さんから変なあだ名をつけられてしまうかもしれない。「今日もあの『打ちたい台無い野郎』来てたわよ~」なんて、休憩室で盛り上がってしまうことだけは避けたい。
しかし、そんな後ろ向きな感情を抱えながらでも打ててしまうのが、魔法の機械パチスロ。「打ちたい台が無い」とかブツブツ文句を言いながら首を傾げていたのも束の間。意気揚々とエイリアンレボリューションを打ち始めたかと思えば、笑顔でアレックスを打ち、しまいにはバーサスに夢中になる。フフフ。これです。これが私なのです(知らねぇよ)。
ノーマルでボチボチお金を使い、持ちメダルが300枚ほど。バーサスで斜めスイカorボーナスの出目からきっちりスイカを射止め、ちょっとゲンナリしたところで席を立つ。さて、もういいかな。ちょっと負けているけれども、今日は帰るか。
しかし、そんな私の視界にチラリとあの姿が。
『HEY!鏡』が1台空いている。
6号機第一弾。興味はあったが、触る機会に恵まれなかった台だ。
これは何かの運命か……。吸い寄せられるように私は鏡に腰を下ろした。
純増5枚。やっぱりこの謳い文句は、5号機世代の私にとってかなり魅力的だ。ルパン世界解剖という変わり種に関してもそうでしたし。なんやかんや言っても高純増AT機には少なからず心惹かれるのです。ちなみに、先ほどまでの『打ちたい台が無いしどうのこうの~』というのはすっかり忘れている。
鏡に関して私は、ほとんどの情報を取り入れていなかった。ちらっと雑誌で読んだくらいで、あえてあまり詳しいことは調べないようにしていたのである。そう、すべてはこの初打ちをワクワクするため。ワクワクするためなのです。
ざっとした台の仕様は把握している。確か「HEYカウンターを貯めてどうのこうの~!!」って感じだったはず。
これか。ビリビリしてるけど、ちょっとよく分からないから無視しよう。
『とりあえず持ちコインで当たることが目標かな~』
そう思って回していると、打ち始めて120ゲーム程。HEYカウンターがレア役連打でわけわからないことになったが、何となくボーナスを引く。そのボーナスがあっさりとATに当選。あまりにもあっさりしすぎて、ほとんど何が起こったのか分からなかった。最近やっていたアニメの封神演義と同じくらいよく分からなかった。
ベル回数管理のAT。10回~100回の振り分けがあって、それをループさせていく感じだったかな? ATである『慶四郎チャンス』と引き戻しゾーン『ドライブゾーン』をぐるぐるさせる感じだ。
なるほどね、こういう仕様なのね。ガッテンガッテン!!
なーんて言っていると、その後も引き戻しが連続して。勿論出玉がゴリゴリ伸びる……。
あれ? 簡単すぎない?
よく分からないからだろうか。感動が薄い。なんだろうか。初打ちあるあるである。
しかし、初打ちでも確かに分かることが1つある。出玉スピードめっちゃ早い。
これは乗ってくれば面白いわ。毎回継続するかどうかのヒヤヒヤはまあ見方によっては面白いし、ドライブゾーンで出玉が多少持っていかれるのは仕様上仕方がないのだろう。設定看破要素とかが出揃ってくれば、ホール的にもかなり面白い感じになるんじゃ……。
出玉的にはやっぱり継続確定の豪遊閣か頂対決を効率よく引かないとダメか。あとは思い切って大きめのベル振り分けが欲しいな。
とか言っていると、
引いたじゃん。
途中、レア役でのベル減算ストップも引いて、思ったよりも出玉が伸びる。
っていうか、この画面可愛すぎるだろ。操さまが可愛いのは当たり前なんだけど、牡丹ちゃんやべぇよ。可愛い。可愛すぎる。獲得枚数なんでどうでもいいよ。この画面を見たいということを理由に、今後この台を打つ可能性が非常に高くなった。
あーあ、かわいいなぁ。操さまも牡丹ちゃんも。
手ごたえと共に、そう感じていた時だった。
お、よしよし。これは助かる。まだ伸びるだろ。
『完走あるか……??』
そんな予感が頭をよぎった瞬間だった。
その②に続く。