VS『大神~回胴編~』その①
某日、都内某店。華麗な二度寝を決めたことにより朝イチの抽選に参加できなかった私は、開店から30分ほど経ったホール内を歩いていた。
寝坊したのだからメイン所の機種に座れないのは仕方がない。ならばノーマルタイプでぼちぼち遊んで、今日は早めに切り上げるか……。
そんなことを考えていた時、ふと新台コーナーに目が止まる。5・9号機の新台がこぞって空いている。最近はこんな光景を良く目にするなぁ。
ARTメインの5・9号機が朝イチ、いの一番に埋まるなんて状況は、ほとんど見かけない。ノーマルタイプは別として、やはりART機に関して言えば旧基準機に分があるということだろう。
かく言う私も、5・9号機を朝から打つというのはあまりない。たぶん、朝からピンポインントで狙いに行ったのは、みんな大好きマイケル・ジャクソンくらいのものだ。
新台かぁ。どんな台かも分からないが、打ってみても良いか。たまには朝から新台を打つのも悪くない。
私が腰を下ろしたのは、一台だけ導入されていた『大神』だった。
この台のざっくりとした情報は知っていた。確か自力バトルタイプのARTを搭載しており、そのARTがなかなか良くできていると。結構面白いらしい。
そんな情報を聞いてしまっては、楽しみになってしまう。よーし、期待しちゃうぞ……
……とは正直ならなかった。半信半疑がいいところ。どうも疑ってかかってしまうのである。これまでにも、そんな情報で何台かの5・9号機に触ってきては「うーん……」となっていたのだから。
まあ、軽くね。軽く。面白くなかったら、違う台打てばいいさ。私は期待しすぎないよう自分に言い聞かせながら打ち始めた。
ボーナス+純増1・0枚のART機。
ボーナスはどうやらリプレイ重複がメイン。
ARTへはチャンスゾーンかボーナスから突入させるのだが、そのチャンスゾーンへは主にボーナス終了後、もしくはART終了後に突入するらしい。そのほかにも、500ゲームのチャンスゾーン天井も存在するとな。つまり、レア役では抽選してないのか? まあ打ってみないことには分からないわな。
まず投資14本でボーナスを引く。これがビッグ。はあ。やっと引いた。金額的にはまだ大したことないのだが、通常がなかなかキツい。通常時に図柄がグルグル回る系の演出を搭載しているスロットはどうも苦手なのである。
とりあえず一回ARTをやるまでは打とう。でないと肝心の面白いといわれている部分がわからない。
このボーナス後、チャンスゾーンに突入。このチャンスゾーンはスルー。まあ、一回目だ。許してやるか。
その後追加投資なしで再びビッグ。この後のチャンスゾーンもスルー。僅かに眉間に皺が寄る熊井。
(い、いや。我ながらさすがにイラつくの早いわ。落ち着けって。二回目だから)
自分にそう語りかける。自分で自分に言い聞かせるという強引な手段で、何とか冷静さを保つことに成功した私はその後持ちコインで三度目のボーナスを射止める。レギュラーだった。よしよし、枚数はとりあえずいい。チャンスゾーンが大事だ。
今度こそはぶち込むしかない。レア役だレア役。チャンスゾーン中になんかレア役引けば、最低でも期待度50%くらいあったはず。なんでもいいから引け! 引くんだよ!! ああ、チンタラしてたら転落目引いちゃうじゃん。さっさと引けよ、何でもいいんだって!!
そんな質もガラも悪い願いが通じたのか、チャンス目を引く。
ああっ! 引いた!! 引いたんだったら行けよ!! おい、頼むぞ行けよ!! 頼んだぞ!!
その思いが実を結ぶ。無事ARTに突入。
なんとか射止めたART。約30ゲームの間にベルやらレア役やらを引いて、筆神と言う仲間を集めていき、その集まった仲間の数がそのままその後バトルパートのSTゲーム数になると。最高12体、最低でも5体はもらえるので、5~12ゲームのSTになる。バトルパートは、モンハン月下みたいな感じだ。ベルを引けばいい。
体感だが、ベルの払い出しが7枚なので、純増1・0枚でもそこそこベルが引ける。勿論、筆神が多いに越したことはないが、意外と勝てる。
おもしろいなぁ。自力感ある。もしかして結構やれる台なんじゃないの?
出玉が800枚を越え、なんとなく可能性を感じ始めたとき、バトル勝利後の『天晴』の画面で見慣れないプッシュボタンが。
えいっ
これはっ!? なんか偉そうな演出だ!!
私はあわててスマホを取り出し、その恩恵を調べた。えっと、なになに……。『天照覚醒』。筆神の性能がアップして、かつ一回復活が確定すると。ARTが連チャンしやすくなるってことだな。しめしめ。もしかして、このまま完走ワンチャンあるんじゃないのぉ~!?
あっさりと終了。
最後、リプレイが9連したときは思わず「ひぇ~!!」と叫びながらひっくり返りそうになった。すんでのところでなんとかひっくり返るのだけは耐えたが、そのくらいのショックを受けた。
さあ、ここからまた通常だ。しかし、ある程度まとまった出玉を得たので、若干の余裕はできた。これでまたしばらく頑張れる。もう一回ARTやりたい。やりたいのだが……。
ボーナスも200分の1を越えている。あらゆる設定示唆は、あらかた弱い。通常画面と奇数設定示唆のオンパレードだ。台から発せられる、あまりにも強い設定1アピール。惑う事なき、圧倒的な設定1臭。そりゃあそうだ。たった一台しかないバラエティーの5・9号機に設定を使うとは思えない。どうするか。やめるべきか。今やめればプラスだ。楽しいんだけどな。やめるべきだろうな。おもしろいんだけどなぁ。
何か打つきっかけがあれば、その辺の期待値的な理由吹っ飛ばして打てるんだけどなぁ。一回くらい高設定示唆が出るとか、設定差が大きい単独ボーナス引くとかさ。いや、今頃そんなもの出ても間違いなく下だと思うんだけど……。
こうなってくると必要なのは最早自分をごまかすための理由なのだ。ちょっとでいいからそんな言い訳が欲しい。
「なんでこいつ、5・9号機の一台しかない台ハチャメチャに粘ってるの?」
店内にいる上手い打ち手は、意気揚々と大神を打つ私を見てそんなことを思うかもしれない。そう思われたときに、私はこんなことを思いながら、したり顔をしたいのだ。
「はい? 期待値追ってますけど?」
そんな私の情けない思いが通じたのか。ART終了後すぐに単独っぽいボーナスを引く。
はい、おっけー。
しかもその単独後、待ちに待った高設定示唆が。
はーい、ありがとうございまーす。これでしばらく打てるぞ。しめしめ。
熊井は推測設定1の大神を続行することに決めた。
その②へ続く。